「顔のトポロジーをどうしたらいいのかわからない」
顔のモデリングをしている際にどういうトポロジーが最適なのか悩みますよね。
僕もよく悩むのですが、「アニメ顔」や「美少女系」から「リアル系」など色々作ってきて、今のところ「基本の考え方としては4つに分類できる」と思ってまして、この記事ではそれを紹介します。
「構造」とか「どうポリゴンループ流すか」みたいなのも大事なのですが、それ以上に「考え方」や「意識」、「アニメーションした際にどう使われるのか」を理解してモデリングすることが重要だと思います。
シルエット型
トポロジーの構成がシルエット重視で構成されている方式です。
美少女系、アニメ色が強い作品なんかはこれが多いイメージがあります。
トポロジ、造形的特徴
「頬」の輪郭のトポロジが特徴的で、ナナメから見たときにシルエットがハッキリと出るようになっています。
キャラクターのテイスト的に「ほうれい線」が必要ない場合が多いので、口周りのトポロジがあっさりした構成になっていることが多いです。
ポリゴンが少ない方が口周りの大きい変形もさせやすいですし、セットアップ的な手間も最小限に抑えられ、アニメーターが頂点ベースで編集する際なども編集しやすくなります。
ただし、造形的にはエッジがきいているので、立体的なグラデーションの陰影情報が入る場合や頬に模様が入る場合など、場合によっては違和感を感じることもあるかもしれません。
アニメーション的な視点から見たこのトポロジ
アニメーションする際も、シルエットとなる部分が明確なので、そこを変形できるようにしておけば、シルエット調整はしやすいと思います。
影となる面も明確にわかりやすいので、陰影もつけやすいです。
法線編集による影の調整もしやすいと思います。
Web上で公開されている作例
ネットで見れるもので言うと、巷にあふれているアニメ系の造形は大体これだと思います。
『プリキュア』
わかりやすく「シルエット型」のトポロジをしていると思います。
『バンドリ』
動画内で出てくるトポロジを見ると、とてもポリゴン数が少なくまとめられていることがわかります。
『GUILTY GEAR Xrd』の「アニメ調キャラモデリングTIPS」で紹介されている顔のトポロジ
とても有名なTipsですが、アニメらしく仕上げるトポロジとして紹介されています。
口の部分がかなりシンプルになっているのも特徴的だと思います。
亥と卯さんのセルルックなキャラクタモデリングチュートリアルで紹介されている顔のトポロジ
わかりやすく「シルエット型」のトポロジをしていると思います。
まかろにさんがTwitterで公開されていた顔トポロジ
わかりやすく「シルエット型」のトポロジをしていると思います。
宮嶋克佳さんがTwitterで公開されていた素体
再構築されたメッシュはおそらく「シルエット型」に変更されたのだと思います。
言及されているフィギュア原型の素体のトポロジは「リアル指向」だと思います。
加速サトウさんの『無頼星(ブラスター)れんこ』『初音ミク』
頬周りの造形が丸みがありますが、トポロジの流れとしては「シルエット型」かと思います。
竜とそばかすの姫
ベースがディズニー系のキャラクター造形なので、「リアル型」っぽい雰囲気があるのですが、トポロジの流れだけみると、「シルエット型」に見えます。
頬の部分やアゴのラインも強調されるようにエッジが足されているのが見て取れます。
リアル型
トポロジーの構成がリアル系のトポロジーと同じ構成になっている方式です。
つまり、筋肉、骨格の構造に沿った作りになっています。
海外のモデルとかでもよく見る「正統派フェイシャルトポロジー」といえると思います。
アニメでもリアル系のテイストの作品の時はこれが多いイメージがあります。
海外系やリアルなテイストな作品だと、リアル系になる傾向があります。
また、目が小さくて骨格がしっかりした大人のキャラクターとかも、この分類になりやすいです。
応用としては「老人」とかもこの分類に当たると思います。
トポロジ、造形的特徴
トポロジ・造形的に「シルエット型」と違うのは「頬」かと思います。
「シルエット型」は「シルエット」を優先しているので、頬の造形がかなりエッジの効いた感じになっているのですが、「リアル型」の頬はリアルな感じで丸っこい膨らみを作ることができます。
また、トポロジ的には口周りが結構違います。
「ほうれい線」が作れるようなトポロジーにすることもできるのが特徴だと思います。
ほうれい線はあったりなかったりしますし、純粋に「リアル型」というものから、頬のところがリアル系の思考がミックスされてるものから、骨格を強調したものなど応用は幅広いです。
アニメーション的な視点から見たこのトポロジ
リアルなトポロジをしているので、人体構造に沿った変形をさせる場合はこちらの方が変形しやすいと思います。
また、シルエットにリアルな顔造形の変化を持たせたい場合は、こちらの方がリアリティが出ると思います。
その分、明確な影付けの境界線などはないので、セルルックで影を入れる際はテクスチャで描いたり、シェーダを工夫するなど何か工夫する必要があります。
Web上で公開されている作例
「BLAME!」
わかりやすくリアル型のトポロジをしていると思います。
「シドニアの騎士」
わかりやすくリアル型のトポロジをしていると思います。
崩壊3rd PV
トポロジの区分けや頬周りの流れなどを見ると、リアル型だと思います。
メーウ『pair* Factory MIX』PV
シンプルなトポロジ構成をしていますが、リアル型だと思います。
ドラゴンクエスト ユア・ストーリー
ミックスっぽい感じはありますが、基本的にはリアル型に見えます。
頬のあたりがシルエット型っぽい雰囲気も少し入っているように見えます。
原神
三角形化されていますが、トポロジの流れや造形の感じを見る感じおそらく「リアル型」だと思います。
DisneyのModeling SupervisorのSergi Caballer氏のキャラクター
「リアル型」のトポロジを作るならとても参考になる動画だと思います。
日本的アニメの用途なら、PART1くらいまでで十分です。
元PixarのCharacter Technical DirectorのBrian Tindall氏のキャラクター
Brian Tindall氏の「The Art of Moving Points」はセットアップまで考えるならとても参考になると思います。
スパイダーマン:スパイダーバース
目のあたりのトポロジが映ってますが、リアル型だと思います。(造形的にもリアルですし)
この記事で書かれている「パフォーマンス・ライン」の考え方は「記号型」の考え方だと思います。
デフォルメ型
キャラクターによって形状の範囲が広いので、一概に「このトポロジ!」と言いづらいのですが、極端に言えば、シンプルな流れの中に穴が開いていたり、パーツが付いているみたいな印象のトポロジ構成になっている方式です。
デフォルメの強いかわいい系(シンプルなキャラクター)なんかはこれが多いイメージがあります。
正直トポロジとしてはこれが一番難しいと思います。
キャラクターによって最適なトポロジが変わったり、シンプルなだけにセンスが必要になるのもそうですが、セットアップやアニメーションやルックまで含めて後工程をすべて把握した上で、どういうトポロジが最適か判断する必要があるからです。
トポロジ、造形的特徴
口の極端な変形をするために、口の周りを周回状になっている場合が多いような気がします。
流れや形状としてはシンプルなのですが、それを維持した状態で部分部分をくっ付けていきつつ、流れをシンプルに保つのはトポロジに関する理解度が必要な感じがします。
アニメーション的な視点から見たこのトポロジ
上手くセットアップが組めれば、色々な変形がかけられやすいような気がします。
作品によっては、デフォーマで大きく変形されることを想定している感じがあります。
特に口を大きく開くことを想定して作られている場合が多いように見えます。
こういった場合は、トポロジーが特殊で形の流れよりもトポロジの変形がきれいにいく方を優先して作られているため、ポリゴンが少ないと輪郭を作るためのエッジが足りなくて形を維持するのが難しい可能性があります。
なので、そういった特殊なことをする場合は比較的ポリゴン数が多くなる傾向があるように見えます。
Web上で公開されている作例
イナズマデリバリー
とてもシンプルなキャラクターですが、顔のトポロジを見ると、微妙な立体感の変化や変形後のことも想定して作られている感じがします。
The Peanuts Movie
『The Peanuts Movie』のキャラクターは上記で挙げたリギング前提のトポロジーをしている感じがします。
リグがかなり特殊ですが、Christian Haniszewski氏のArtStationのThe Peanuts Movieのページの一番下にあるYoutubeムービーなんかを見ると面白いです。
STAND BY ME ドラえもん
『STAND BY ME ドラえもん』とかもよくよくトポロジーを見ると、口周りとかがすごく大口を開けたりできるようなトポロジーになっています。
3DCGへと進化したキャラクター ©2014「STAND BY MEドラえもん」…
Inside Out
『Inside Out』に出てくる一部のキャラクターもこの分類に当たると思います。
記号型
目とか眉とか口とかの「記号」をすべてパーツ化して、顔のトポロジーと一体化せずに分離しておく構成。
カット合わせで「2D的にに制御して上から置く」スタイルです。
要は完全な「福笑い」にします。
完全な記号型でなくても、特殊な目(×とか〇みたいな目など)や特殊な表情の線や影などを頭の内側に仕込んでおいて、モーフィングで出すといったことも、この記号型の手法の一種だと思います。
アニメーション的な視点から見たこのトポロジ
記号として割り切っているので、記号感の強い絵は作りやすいと思います。
他の手法だと難しく考えてしまうような表現も、その記号として平面的に処理できるので、ある意味割り切りよく考えられると思います。
ただし、その分、
- パターンをいかにして仕込んで、どうやってアニメーション時に使いやすくするか
- いかにして記号を割り出すか
- ベースの顔トポロジとの関係性(顔の変形に対するセットアップなど)
といった要素を考えるのが難しい場合もありそうな気がします。
Web上で公開されている作例
ハイスコアガール
『ハイスコアガール』で採用していた「福笑いシステム」なんかは、まさにこの「記号型」の典型例です。
とても漫画的というか、「記号化」された絵がそのまま出てますよね。
宝石の国
『宝石の国』もよくよく見ると、目が浮いていることがわかります。
『宝石の国』 – メディア芸術カレントコンテンツ 市川春子の同名マンガを原作とした、京極尚彦監督による『宝石の国』のアニメーションは、全11話が2017年10月から12月にかけて放映された。人型の宝石たちが生きる、原作…
3d2dMuke氏のカートゥーンリグ
3d2dMuke氏のカートゥーンリグの口とかもこの「記号型」だと思います。
『ハイスコアガール』の「パーツが浮いている」「テクスチャベース」に対して、こちらは「口が顔に沿うようになっている」「ポリゴンベース」という違いがあります。
The Food Thief
すごい変形の仕方ですが、『The Food Thief』も記号型に当たると思います。
Technical breakdownを見ると、様々な要素が別々にパーツとして作られていることがわかります。
まとめ
勿論、パターンとして挙げた4つ以外にも、ミックスしてるようなのも沢山あります。
また、特殊な顔の造形とかもありますが、「考え方」としては、基本はこの4パターンの派生系かなと思っています。
「他にもあるよ」って方は是非コメントください!
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