自主制作アニメ成功のコツ

今はSNSを使えば、「プロ」でも「一般の方」でも「学生」でも発信できる時代になりました。
そんな中で「自主制作(個人作品制作)」、少人数でのアニメ制作などを作っている方もいますが、「作品制作(プロジェクト)」が上手く進まないという方も多いんじゃないでしょうか。

アニメ業界にいると、周りに「仕事をしながら自主制作」をしている方がチラホラいるのですが、長いこと業界にいると、その中で「上手くいって完成させる人」と「失敗(自然消滅)に終わる人」がなんとなく見えてきます。

今回はそんな経験から得られた、おそらく「こうすると上手くいく」「こうすると失敗する」という分析結果を紹介します。

目次

ルーチンを作る

自主制作が上手くいっている人は、「セルフマネジメント」「時間管理」が上手い人が多いです。
「作りたいもののためにしっかり決まった時間を確保している」という印象があります。

さらにそれが「習慣化」していて「毎日決まった時間に〇時間自主制作のために使う」と決めている人は強いです。
たとえ牛歩でも、必ず着実に進むからです。

「習慣の影響力・強さ」は色々な本でも言われているところですが、まずこれができるか否かが成功を大きく左右すると思います。

アニメ制作は膨大な作業量があり、時間がかかります。
完成させるためには「制作を継続させるだけのやる気・モチベーションの維持」が必要になってきます。
この「やる気・モチベーション」というのは変動しやすいので、一時的な「やる気・モチベーション」だと、

  • 「今日はやる気がしないから明日…」とやってるとなかなか進まない
  • 消えていくと「自然消滅」

といった感じで「失敗に終わる」ことが多いんです。

なので、「ルーチン化」つまり「習慣化」してしまうのが一番いいと思います。
夜に歯磨きをしないと気持ち悪いのと同じように、早朝や帰宅後などに作業しないと違和感があるレベル、要は「当たり前」に持っていけたら、いつか完成します。

習慣化する方法は書籍やYoutubeなどで調べるのがよいかと思いますが、僕なりに挙げるのならば、この3つが重要かと思います。

  1. 同じ時間に作業する
    朝活、帰宅後、同じ曜日など特定の時間に作業するということを意識づけると習慣化しやすいです。
  2. とりあえず行動する、反復する
    気分に左右されたり、悩まずに「とりあえず動けるかどうか」が大事です。
    案外作業を始めることさえできれば、続いたりします。
  3. 例外を受け入れる
    イレギュラーは絶対起こるので、柔軟性を持っておくと継続しやすいです。
    時間がないときは、軽い作業を少しだけでもやるとか。

まとめると、イチローさんの名言がわかりやすいです。

「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行くただ一つの道」

現実を見る(クオリティとスピード)

『完成しなければ意味がない』

みんな最初に夢を描くんですよ。
「こんな感じで、みんなが驚くようなクオリティ高い作品を作ってやる」って。

「現実」を見てください。

自主制作が上手くいっている人は、結構現実的な範囲で作る人が多いんです。
要は「自分が何を作りたいか、何を大事にしたいかという目的はっきりしていて、それ以外は一旦切り捨てるというのができています。そして、その中で「最低限不自然に見えない範囲の絵作り」を考えるといった感じです。

例えば、こう考えてみましょう。

ストーリーもの(長尺)が作りたいのか?
表現したい絵(映像)が作りたいのか?

ストーリーもの(長尺)が作りたい

「ストーリーを長尺で描きたい」のならば、「クオリティは下げる」必要があります。
もしくは、「こだわるべきポイントを絞る」といった感じです。
見せたいものは「ストーリー」であって、絵や動きは「最低限伝わればOK」だからです。

表現したい絵(映像)が作りたい

「表現したい、またはクオリティの高い絵(映像)」が作りたいのなら、「尺は短く」します。
今はTwitterをはじめ、TiktokやYoutubeショートなど「短いもの」でも見てもらえる時代です。
「MV(2~5分)」や「CM尺(15秒、30秒)」は勿論、極端にいえば「1カット」でも見てもらえます。
クオリティを上げる、表現を探求するというのは時間のかかることなので、「短く」することオススメします。

自分の作れるペースとスピード感、クオリティを把握する

「ルーチン」を作った上で、「自分のペース・スピード」を把握できるようになると成功確率が上がります。
これができないと、「思い描いている完成像・ペース感」に対して、「時間が足りない上に完成が見えない」ので、いつの間にか「やる気消失」からの「自然消滅」する傾向があります。

当たり前ですが、商業アニメは多くのセクションの熟練のプロが関わり、仕事として時間を使って、なんだったら身を削りながら作っているので、同等レベルのものを余剰時間で作るのは無理があります。
最初から完璧を求め過ぎないことが大事です。

sawada

「己を知る」ということです。

余談ですが、僕の知っている中では「本当に自分の作品をガチで作りたい人(通称「自主制作ガチ勢」)」は、仕事の量(収入)を減らして時間を捻出している人もいます。こんな交渉もできるのは、大体そういう人は「優秀なクリエイター」であることが多いからなんですが。

最初にスケジュールを切る/目標を決める

「ルーチンを作る」「クオリティとスピード」を合わせて意識すると、ある程度の「計画性」が大事なことがわかると思います。つまり、以下の順番で考えて「確保できる時間作業にかかる時間」が成り立つようであれば、成功確率を上げることができると思います。

STEP
1週間当たり、どれだけの作業時間が確保できるのか?

例えば、平日は「帰宅後の3時間」とか、「朝活2時間」とか、
休日は「毎週土曜日に8時間」とか、なるべく具体的な方がいいです。
無理のない範囲で「継続」できることを重要視しましょう。

STEP
作りたいものはどのくらいの時間がかかるのか?

頭の中で浮かんている作りたいものをメモ帳やノートやコピー用紙などに書いていましょう。
要は「プラン」を立てて、「作業にかかる時間」を計算するということです。
このSTEP2は難しいので、下の部分で詳細に解説します。

STEP
いつまでに完成させたいのか?

「3ヵ月」で完成させたいのか、「半年」「1年」「5年」とかかけても完成させたいのか。

STEP
「時間」が足りないのであれば、どこを削るのか?

「作業開始から完成期日までにかけられる時間=確保できる時間」を、「1週間の作業時間」を使って計算してみましょう。
そして、「確保できる時間≧作業にかかる時間」になるか確かめてみましょう。

作業工数の割り出し方

実際に作る必要があるものを割り出して、作業にかかる時間である「工数」を計算してみましょう。
具体的に言えば、自分で作りたいもののプランを練った上で、アニメでいう「制作さん」の仕事である「物量割り出し+スケジュールの表」を作るということです。
例を挙げて、シミュレーションしてみましょう。

ここでは「詳細な書き方」などは書きませんが、以前書いた管理表の記事とかを参考にすると「プランニングの仕方」が想像しやすいかと思います。

具体的なシミュレーション①「4分のミュージックビデオ」

「2人の3Dキャラクターが出てくる4分のミュージックビデオ」を作りたいとします。
「テンポ」や「見せ方」によって「カット数」は大きく変わるのですが、仮に「90カット」としましょう。

すごくザックリな計算ですが、「3Dアセット(モデル~セットアップまで)」は「1ヵ月で1体」作ると想定すると、「2か月」かかります。
さらに「カットワーク(アニメーション~レンダリング~コンポジット)」を「2日で1カット」のペースで作ると、「180日かかる」ということですね。

すると、「プリプロ」「ポスプロ」なども合わせて、「大体9~10ヵ月」くらいで完成する計算になります。

具体的なシミュレーション②「10分の短編作品」

ストーリーものも考えてみましょう。
テレビアニメの1話数約21分が一般的には「約300カット」と言われているので、「10分」であれば「150カット」ある計算になります。 つまり、映像として完成品の状態のものを「1日1カット」作って、1日も欠かさず毎日作っても、「150日かかる」ということですね。これが「2日で1カット」になったら「300日」、「3日で1カット」になったら「450日」ということです。

そうすると、仮に「1日3時間確保できる」「1年で完成させたい」のならば「2日(6時間)で1カット完成させる」というプランが考えられます。 そして、クオリティもその範囲内に収めるにはどういう絵作りをすればいいか考える必要があるということです。

カットワークだけでこれだけあります。 これに脚本・コンテ・デザインなどの「プリプロ」や、音入れ・編集などの「ポスプロ」も入れると、平気で時間が伸びていくのは簡単に想像できると思います。
3DCGならば、アセットを作る期間やレンダリングに対するコストも見積もらないといけません。

バッファを確保しておく

忘れちゃいけないのは、「バッファ」を見積ることも大事です。

学生時代も含めて今まで色々な作品制作を見てきましたが、非常に高確率で「途中で何か上手くいかない要素」が発生します。ピッタリ過ぎると、こういった「何か例外が起こったとき」や「上手く進まないとき」に変な焦りが生まれやすくなります。

例えば、「土日は作業時間がいっぱいとれるから、ここでいっぱい作れる!」とそこまで想定してピタピタに合わせると、後々真っ青になるので気を付けましょう。
「バッファ」という名の「ゆとり」は「心のゆとり」を作ってくれます。

sawada

時間が余ったのなら、ここで初めて「さらにクオリティを上げる」こともできます。

プラン・スケジュールを立てることは非常に重要

上記見てきた通り「確保できる時間≧作業にかかる時間」が成立しなければ、ほぼ間違いなく「成功しない」と言えるでしょう。これを「見える化」してくれるのが「プランニング」であり、「スケジュール組み」です。

また、「人は締め切りいっぱいまで使おうとする習性」があったりとか、「デッドラインが人の行動を決める」とも言われているので、「スケジュールを立てること」は非常に重要と言えます。

sawada

ここでは「ボリューム多め」を想定して書きましたが、「短くてライトに作る」みたいな感じでも「5日で作る!」とか「期間」を決めた方が行動を起こしやすくなります。

スケジュールが見えると、「1カットあたりどのくらいの時間で作らなくちゃいけないのか」がわかるので、それに合わせて絵作りの方向性を設計していくこともできます。
3DCGならば、「モデルの数」なんかも重要になったり、どうやったら「使いまわし」が効くかなども考える材料になると思います。

sawada

「自主制作やってるんだー!いつ頃完成する予定なの?」と聞かれて、答えることができない場合は「完成しない」と思った方がいいと思います。
「なんとなく進める」が一番ダメです。

チーム制作はオススメしない。

sawada

周りの自主制作勢で「チームで作る」って言って成功した例を見たことがないです

大体「みんな仕事が忙しくて作業が進まずに自然消滅」「上手くかみ合わない・作るものに納得できなくて途中で解散」と言うのがセオリーです。

かく言う、僕もそうでした。
働き始めて2年目くらいの時に同期の仕事仲間3人で自主制作しようってなったのですが、結果はプリプロ段階でお互い作るものに納得ができずに解散しました。(上記で書いてきたようなことができていなかったのもありますが)
まぁ後々色々あって、僕以外の2人は監督・演出になってたりするのですが…

見たことはありませんが、こういうチームならOKかもしれません。
圧倒的に何かを作りたいという「個人」がいて、その人が「監督」。
そいつに対して「手伝うよ」というスタンスの周りがいる。
究極、その「手伝い」が全員いなくなっても「一人でも作る」っていう心持があるかどうかが大事です。

ちょっと考えてみてください。
チームのみんなが上記で書いた「ルーチン化」をできると思いますか?
どうしたって「日々の生活」があるので、「モチベーション」が強くあるか「仕事」でもなければ、優先順位が下がってしまうんです。家に帰ったら誘惑がいっぱいですから。
よっぽど監督のカリスマ性があって、「こいつのためなら俺/私の時間を捧げられる!」くらい周りの人を引き付けられる何かがあったら話は違うかもですけど、そういう人は既に自分で何かを作っているか、商業的に人を集めて作れる人だと思います。

まとめ

僕の周りでは自主制作があったから監督になった方も多くいます。
3DCG系は「一人、もしくは少人数でも作品としてまとまった尺が作れる」ので、特にそういう人が多いように思います。
やっぱり目見えて「この人はこういうものが作れるんだ」ってプロデューサーに伝わりやすいですしね。

あと、単純に「作ってる時間」がそれだけ長くなるので上手くなるのは必然ではあるんですが、自主制作がきちっと完成できる人って上記の特徴を持っていることが多いので、手が早くて、時間内にいいクオリティで上げてくる人が多いと思います。
仮にTwitterでバズったり、Youtubeですごく再生されるみたいな結果を伴わなくても、その「作り切った成果」は次に繋がると思います。

sawada

時間は有限なので、ご利用は計画的に。

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